疥癬

【疥癬:かいせん】

疥癬はヒゼンダニというダニが皮膚の角質に寄生して強いかゆみを引き起こす、接触により人から人へ感染する病気です。

疥癬の原因

ヒゼンダニが皮膚の一番外側の角質の中に寄生して発症します。ヒゼンダニは体長400μmというごく小さなダニです。人の肌から離れると長くは生きられず、高温や感応によわく50℃以上に10分以上さらされると死んでしまいます。

角質にトンネルを掘って、1日2-4個の卵を産みつづけますが、卵は3-5日で孵化し10-14日で成虫になります。

疥癬の症状

ヒゼンダニに感染してから2-4週くらいたつと、強いかゆみを伴う小さな赤いブツブツが体や腕足にみられたり、手の平や指の間では‘疥癬トンネル’という線状にもりあがった皮疹が見られることもあります。初期のうちは湿疹に症状もよく似ているためアトピー性皮膚炎や乾燥性の湿疹、皮膚掻痒症などと鑑別が非常にむずかしいこともあり、湿疹の治療で悪化してしまう場合もあります。

頻度は高くないですが、角化型という特殊な疥癬(ヒゼンダニの数がものすごく多いタイプ)では、垢がたまってこびりついたように見える灰色~黄白色の厚い牡蠣の殻のような角質のかたまりが積み重なり、爪にも入り込んで厚くガサガサになります。角化型疥癬ではかゆみがない場合もあり、介護度の高い高齢者などは訴えがないためより重症化する場合もあります。

疥癬の感染経路

通常の疥癬の場合は、長時間肌と肌が直接接触することでダニが移動して感染します。少しの時間ではほとんど感染しません。まれに、疥癬の患者さんが使用した寝具・衣服を交換せずすぐに他の人が使用することで感染することはありますが、通常ヒゼンダニは皮膚から放れると長くはいきられませんのでちょっと触れた程度では感染しないと考えてよいです。

ただし、角化型疥癬の患者さんは、ヒゼンダニの数が非常に多く感染力が強いため短時間の接触や、衣服寝具を介した間接的な接触でも感染しますので注意が必要です。角化型疥癬では、通常の疥癬と違ってぼろっと剥がれ落ちた角質の塊や垢の塊にもたくさんのヒゼンダニがいるためそれが付着することでも感染しますので注意が必要です。(角質増殖型の疥癬の方からヒゼンダニが感染した場合でも、いきなり角質増殖型として発症することはありませんので通常の疥癬の治療で治りますので不安になりすぎないようにしてください)

疥癬の診断

皮膚の一部ピンセットやはさみで採取(1-2ミリほど)して、顕微鏡でヒゼンダニの虫体や卵を確認するか、ダーモスコピーという特殊な器具で皮膚を観察してヒゼンダニを確認して診断を行います。顕微鏡検査やダーモスコピー検査では、ただかゆい部分の皮膚を検査すればいいというものではなく、ヒゼンダニや卵がある場所をしっかり見極めておこなわないとならず、みなさんが思っているより熟練した皮膚科専門医の技術が必要な検査です。一度の検査でヒゼンダニが確認できない場合もしばしばあり、1回の検査で「疥癬ではない」と診断することは困難ですので、経過や症状・治療に対する反応をみながら複数回検査をして疥癬であるかどうか診断がつくことも多いです。

疥癬の治療

イベルメクチンという内服薬と、外用剤を組み合わせての治療が中心ですが、かゆみに対しては抗ヒスタミン剤の内服を併用することが多いです。

外用剤は、首から下の全身くまなく症状がないところにも、指の間や外陰部なども含めて塗り残しのないように外用しましょう。

日常生活では、毎日入浴の際に手足の指の間や陰部も丁寧にあらい、タオルなどの共用はさけ、下着や寝間着も毎日交換しましょう。雑魚寝やおなじお布団での就寝は感染の可能性もありますので避けるようにしましょう。

角化型疥癬の場合は、感染力がつよいためできるだけ個室を使いましょう。入浴は一番最後にしていただき、かさぶたや垢が飛び散らないようにしながら、硬く厚くなった垢をふやかしてこすり落としていきましょう。

ヒゼンダニは50℃以上10分で死滅しますので、寝具や衣服は毎日交換してそのたびに50℃以上のお湯に10分以上浸してから洗濯を行い、洗濯のできないマットなどは掃除機で表面を丁寧に掃除しましょう。対処の仕方は、診察の際によりそれぞれの方の状況に応じて詳しくご説明いたしますので、ご不安や心配のある方はお気軽にお声かけください。

しっかりと治療とケアができれば、通常1ヶ月ほどで終息することがほとんどですが、高齢者のかたや状況によっては長くなることはあります。

角化型疥癬の場合では、2ヶ月ほどで終息することがおおいですが、治った後も半年ほどは皮膚のチェックをするようにしましょう。特に周囲の患者さんもいらっしゃる場合は、お互いにうつしあって長引くことのないように一緒に治療してケアをしていくことが大切です。

疥癬は、治癒した後もかゆみが長引くケースもあるため、治癒の判断も含めて特に皮膚科専門性の高い疾患ですので、皮膚科専門医による診断治療をお勧めします。

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