皆さんそれぞれの症状や経過をうかがいながら、皮膚科専門医としてのこれまでの経験や知識をもとに、患者さんの症状ごとにいろいろな検査や治療を組み合わせ選択して診断治療を行っていきます。治療の反応により変化する症状もあり、当初診断がつかなかったものが検査治療の経過ではっきりとしてくる場合や、診断が変わってくることもしばしばございます。
いくつかの病気の症状が合併し複雑に絡み合っているケースもあり、その場合は特に検査や治療の結果、症状とともに診断もかわっていくことも多いですし、1回の検査では診断がつかない場合も多くございます。皆さんが感じる症状の経過や気になることをお伝えいただく内容も大事な所見の一つですので、ぜひ通院のたびに詳細に遠慮なくお伝えいただきますととてもありがたいです。
以下には、当院でおこなっている検査治療の代表的なものをあげております。項目をタップで該当カテゴリまでスクロールします。
採血による血液検査です。肝機能や腎機能・貧血の有無などの一般的な評価だけでなく、疾患別に特異的な項目や所見もありますので、それぞれの皮膚症状や状態に応じて採血項目も適切に選択して行います。
アトピー性皮膚炎や薬疹などでは好酸球という血液の球が上昇したり、アトピー性皮膚炎の病気の勢いを評価するためにTARCという項目を定期的にチェックしたり、皮膚症状のみの初期の膠原病や自己免疫性水疱症では特異的な抗体を測定することも診断に有用です。
白癬菌(水虫)やカンジダなどの真菌感染症、疥癬などでは皮膚の角質を採取して特殊な薬品で角質をとかして顕微鏡で観察し病原体を目視することで確定診断ができます。適当にちょこっと皮膚の一部をつまんでいるように見えるかもしれませんが、実は的確な場所から検体採取をおこなわないと偽陰性となる場合も多く、皮膚科医による診断をおすすめします。
ダーモスコピーという虫眼鏡のような機器をもちいて、皮疹の色調や構造、深さなどを評価する検査です。直接皮膚に当ててみるものと、皮膚には直接触れずに見る検査、それらに特殊な光線を併用して病変を評価します。
主に、ほくろやメラノーマ、脂漏性角化症、シミなどの黒いほくろのような色素性病変・腫瘍の鑑別診断に用いますが、血管腫・円形脱毛症でも有用です。保険適応があり、痛みもなくその場で簡単にできる検査であることと、肉眼だけでなくより詳細に病変を評価できるので正確に診断できる確率を高めるために非常に有用な検査になります。ただし、すべての病変をダーモスコピー検査のみで確定診断できるわけではありませんので、確定診断のために組織を調べる検査が必要になることもあります。
検査値のみでアレルギーの確定診断はできませんが、症状やその経過・状況に応じてアレルギー検査の結果も併せて総合的に評価することで、原因が見つかったり、結果を踏まえて対策することにより症状の緩和が見込める場合もありますので、そのほかの検査結果や適切な治療に、アレルギー検査の結果も組み合わせて評価していくことがおすすめです。
当院ではView39という39種類の項目でのアレルギー検査(採血)、パッチテスト、プリックテストを行っています。
View39は採血の検査で、日本人で比較的頻度の高い39項目の物質に対するアレルギーの数値を測定します。数値が高いから必ず症状が出るということはなく、逆に数値が陰性でも実際には症状が出るケースもあり、数値はあくまでめやすになりますのでこの検査の数値で確定診断はできません。特にお子さんの場合は、数値が高いからと闇雲に食事制限をしてしまうと、成長の過程に影響が強く出るケースもありますので注意が必要です。アレルギーの原因については、採血結果だけでは診断がつきませんので、みなさんそれぞれの症状・経過と検査値を総合的に評価して診断を行います。保険適応時では3割負担の場合で検査のみで5000円ほどの費用がかかります。
即時型アレルギーの原因検索として行う検査です。原因物質の成分を皮膚に乗せてごく小さな浅い傷をつけ皮膚の反応を見る検査です。アナフィラキシーなどの重篤な症状を引き起こす場合の原因検索では入院での検査が必要になる場合もありますので、適切な医療機関へ紹介が必要な場合もありますので症状経過などを評価して適切に対応します。
原因と思われる物質やその成分を直接皮膚に貼り付けて、実際にかぶれが生じるかで判定する検査になります。遅延型アレルギー反応(原因物質に触れてすぐではなく1日以上たって遅れて反応が出るアレルギー反応)に対する検査です。
この反応では、1週間後などに遅れて反応がでる場合がありますので、正確な診断のために原因が疑われる成分を貼り付けた後、2日後(48時間後)・3日後(72時間後)・1週間後(7日後)に反応を見る決まりがありますので、当院で可能なスケジュールは、水曜日・金曜日・土曜日・翌週の水曜日の4日になります。必ず4日とも受診していただき検査結果を評価することになります。貼り付けた成分の中に原因物質がある場合は、貼り付けた部位に強いかぶれ症状が発生する可能性がありますので、検査後に炎症後色素沈着の茶色い後が残る可能性や、強いかぶれ症状がでて反応性に皮疹が悪化することもありますので、パッチテストは皮膚科専門医の指導のもと検査を行っていただくことをおすすめします。
金属アレルギーでは当院で用意した15種類の金属成分を同時にパッチテストでの検査が可能ですが、金属以外では、かぶれの原因が疑われるものを皆さん自身で用意していただければ、そのものを使ってのパッチテストを行います。(ものによっては強い刺激が出るためパッチテストが難しいこともあります)また、薬疹の原因検索の一つとして原因の可能性がある薬剤を薄めて貼り付けるパッチテストを行うこともあります。陽性であれば原因と判断ができますが、原因であってもパッチテストで陰性となる場合(偽陰性といいます)もありその場合は原因ではないと診断することはできません。
パッチテストの費用は3割負担検査のみでおおよそ1000円強です。なお検査中はテープを貼り付けたまま2日間過ごしますので、その間はテープ部をぬらすことができませんので湯船につかる入浴はできません。背中にはりつけることがおおいため、腰から下のシャワーは可能なことが多いのですが、汗をかく刺激で反応が強くひどいかぶれが起こるリスクや途中でテープが剥がれてしまうと判定不能になる場合もありますので注意が必要で、急ぎ検査が必要な状況でなければ夏場よりは汗のかきにくい冬場に検査を行うことをおすすめします。(金属アレルギー以外であれば、検査項目が少ない場合は時期を選ばずできることが多いです)
肉眼やダーモスコピー検査、採血による検査のみでも、評価が十分にできる場合もありますが、確定診断のためには実際に皮膚病変の一部を採取して、組織の反応を顕微鏡でしっかりと見ることで確定診断に至ることもあります。
特に腫瘍性病変では肉眼的な診断だけではなく、実際の皮膚病変でどのような細胞が増殖して腫瘍の塊となっているのかを見ることで確定診断となります。良性か悪性か、悪性腫瘍の場合では腫瘍の深達度や治療方法の決定のためにも組織学的な評価は必須となります。
病変に応じて部分的に皮膚組織を採取する皮膚生検を行うか、全体を切除して組織学的評価を行うかは選択します。
当院では皮膚生検や、5ミリくらいの大きさまでの良性腫瘍の切除・組織学的検査を行っています。大きさや皮膚病変の状態により必要と判断された場合、一部を採取する皮膚生検でより詳しい検査や治療が必要と判断された場合などでは、適切な医療機関と連携をとりご紹介させていただきます。
尋常性乾癬など日光浴で皮膚症状が改善する病気があることは古くから知られており、日光に含まれる光線のうちで、308nm~313nmの中波長紫外線は、副作用も少なくある種の皮膚症状に対して効果を示すことが研究や臨床データの蓄積から明らかになっています。1976年には尋常性乾癬に有効な波長が313nm近くにあることが報告されておりその後も研究はすすみ1981年には311±2nmの紫外線がナローバンドUVBと名付けられ、その後もいろいろな皮膚症状に対する効果が確認されています。
当院では、エキシマライトというより治療効果が高く副作用が少ない308nmの中波長紫外線を照射できる『エキシプレックス®』という機器を用いたターゲット型光線治療を行っています。ターゲット型光線療法では局所に強い光を照射できるため、病変部のみに限局して短時間での照射ですむ上、治療効果をしっかりと出すことができます。
アトピー性皮膚炎、乾癬、掌蹠膿疱症、尋常性白斑、円形脱毛症、類乾癬、菌状息肉症、慢性苔癬状粃糠疹に保険適応があります。
当院で採用しているターゲット型エキシマライト『エキシプレックス®』は輝度(光強度)が高く、一回の照射時間はほんの数秒から20秒程度です。
治療期間や照射頻度については、病気やその症状・経過により異なりますが、週に1~2回が目安です。効果が出てくるまで5~10回照射が必要なことが多く、効果がしっかりとでるまでは週に1~2回の照射をおすすめします。効果が出てからは状況により照射頻度を週に1回、2週に1回などに調整して維持することも多いです。トータルの治療期間は、2ヶ月から6ヶ月程度になります。
週に1~2回と頻回の通院が必要でありますが1回照射は10秒程度ですぐに終わりますので、お忙しい中でのこまめな通院でのご負担を少しでも軽減できるように、定期通院と組み合わせた照射処置でのスムースな診察枠も調整させていただいております。
保険適応があり1回の照射で3400円ですので(照射面積にはよりません)、3割負担の方で1020円、2割負担の方で680円、1割負担のかたで340円ほどになります。(それ以外に初再診料などがかかります)
副作用としては、照射量が高すぎた場合に強い日焼けと同じようなやけどのような症状とその後の強い色素沈着、皮膚の紫外線による光老化があります。適切な治療をおこなえばやけどや皮膚癌のリスクは非常に低いですが、光線過敏のある方、皮膚悪性腫瘍の既往や現在治療中の方、ペースメーカなどの体内の植え込み型の医療機器を装着されている方では光線療法での治療はできません。
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