【伝染性軟属腫:でんせんせいなんぞくしゅ】
水いぼは伝染性軟属腫という病名ですが、お子さんに多く見られる皮膚のウイルス感染症の一つです。伝染性軟属腫ウイルスによって接触により人から人に移る感染症です。小学生低学年以下に多く見られますが、徐々に皮膚のバリア機能・免疫が強くなることでできにくくなるため、大人で多発することは健康な方では稀です。
水いぼといわれるように、みずみずしい光沢のある白く光ったようなイボ状に出っ張る皮疹が特徴です。皮疹の中身は水ではなく、表皮の成分とウイルスからできた白い塊でモルスクム小体といいます。モルスクム小体が、プールやご兄弟でのお風呂などでお肌同士が接触することで感染します。一つ一つは時間がたつと自然に脱落しますがそのときに周りの皮膚に接触したり、かゆみを伴うことも多いため掻いているうちに潰れて中の塊が接触することによって、自分の体でもうつって広がるためかなり多発してしまうケースもあります。特に脇の下や膝裏など皮膚同士がこすれやすい部位では多発しやすい傾向にあります。水いぼが特に多発するお子さんでは、皮膚のバリア機能が低下しているような乾燥肌やアトピー性皮膚炎などの病変を持つお子さんが多いため、そちらのケアも必要です。
確実に治すには、ピンセットを使って一つ一つつまみとる治療を行います。特に数が数個のうちに見つけてとれば、痛みも少なく負担が少なく治すことができます。10個以上ある場合は、ピンセットによる摘除は痛みや出血もともないますので、小さなお子さんには負担が強くあまりおすすめはしません。というのも、水イボは放っておいても、一つ一つは数ヶ月程度でかさぶたになってなおりますので、なかなか治らないと思っても治ってはできるの繰り返しをしているだけであることと、皮膚のバリア機能や免疫力が徐々にあがっていくことで小学校高学年までに治っていくことがほとんどです。いずれは治るものですので痛みが怖いお子さんを押さえつけてまで無理にとる必要はないかと思いますが、お子さん自身が水イボがたくさんあることでつらい思いをしていたり、施設によってはプールに入れてもらえないこともあり(プールの水を介してうつることはありませんので学校保健安全法でもプールにはいること自体は制限されていません)、それがストレスになってしまう場合には摘除も選択肢の一つと思います。痛みを減らすために、麻酔のテープを貼り付けてからピンセットでつまみとる方法もありますが、お子さんは一度怖いと思ってしまうとテープを貼って痛みがほぼない場合でも押さえつけられたり過去の恐怖を思い出して暴れてしまったり、精神的にも負担になってしまう方もいますので、当院では、やみくもに痛い治療をしたり、絶対にとらない、というきまりをもうけず、水イボの数やそれぞれのお子さんの状況や生活環境、お肌の状態などを総合的に見極めて保護者の方と相談しながら治療法を選択します。
乾燥肌やアトピー性皮膚炎などのバリア機能が低下しているお子さんも多く、そういった方では特に感染しやすいため、その場合は保湿のケアや治療による湿疹のコントロールも平行して行い予防していくことも大切になります。スイミングに通っているお子さんは塩素の刺激でお肌も乾燥しているうえ、お肌とお肌の接触の機会が多いため水いぼにかかりやすい傾向にあります。予防も含めて、プールの後のシャワーはよく洗い流し、保湿をしっかりと行うことも大切です。
つまみとる以外では、ヨクイニンというハトムギエキスの入った漢方薬を飲んでいただくこともあります。錠剤と粉の薬がありますが、味はそれほどまずくないため、ぽりぽりとおやつ代わりに食べられるお子さんも多く、ご負担がなければ併用することもあります。お薬でありませんが、補助的に効果を示すような銀の入ったクリームを塗っていただくこともあります。
海外では、カンタリジンという成分の外用剤が2023年にFDAで承認されましたが、強いかぶれを起こすこともあり日本ではまだ保険適応にはなっていません。
「いつか治るから大丈夫」といわれても今心配な気持ちがあるのだと思いますし、水いぼが多発して長い間つづくことがお子さんや保護者の方のご負担になることもあります。それぞれの方の生活環境や症状に応じてどのように対応するかは、それぞれの状況に応じてしっかりと考えて対応をさせていただきますのでぜひご相談ください。
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