【多汗症:たかんしょう】
多汗症は文字通り汗が過剰に分泌される病気ですが、全身の汗が増加する全身性多汗症(全体の10%)と、脇や手足など体の一部に汗が増える局所多汗症(全体の90%)に分類されます。さらに、原因不明のものを原発性多汗症といい、病気など原因を特定できるものは続発性多汗症と呼びます。大量の汗により日常生活に支障を来すこともあり精神的にも苦痛となる方もいらっしゃいます。特に学生さんの手の多汗症ではノートやプリントがぬれてしまうため困る方や、手先の作業が多い方、人前に出るお仕事の方など想像以上にご負担がある方も多いかと思います。過去の全国の疫学調査では有病率が人口の5.3%と実は高く、その中でも医療機関へ受診されている方が10%以下であることが報告されており、実は悩んでいるのに医療機関へ受診されていない方も多い疾患です。保険適応のある外用薬もありますのでお困りの方はぜひ一度ご相談ください。
全身性では全身の発汗が、運動や温熱刺激にかかわらず増加します。
局所多汗症では、手の平や足のうら・わきなどの限局した部位で、温熱や精神的緊張の有無にかかわらず両側性に過剰な発汗を認めます。多くの方で、小児期~思春期頃に発症し特に精神的緊張により多量の発汗が見られます。重症度の高い方では、したたり落ちるような大量の汗をかく方もいらっしゃり、日常生活に支障をきたすこともあります。手足が絶えず湿っており白くふやけた状態や皮むけを起こすことも多く、指先は冷たくなっている方が多いです。常に湿ってふやけた皮膚はバリア機能も低下していますので、真菌(カビ)や細菌の感染をおこしやくなりますので注意が必要です。発汗は日中に亢進し夜間は停止します。脇の場合では、精神的緊張や温熱刺激により左右対称性に多汗がみられ、衣服にシミができることも多くご負担が多い症状です。
続発性多汗症では、甲状腺機能異常、細菌やウイルス感染症、副腎腫瘍、悪性リンパ腫、低血糖などの原因に伴う症状を併発していることが多いため疑われる症状がある場合は、各専門の医療機関での治療が必要になりますので、適切な医療機関へのご紹介をさせていただきます。
続発性多汗症では、原因となる疾患の治療になります。
原発性局所多汗症においては、日本皮膚科学会のガイドラインでは、4つの部位それぞれに対する治療法の推奨度を定めており、塩化アルミニウムの外用、イオントフォレーシス、ボツリヌス菌毒素の注射などを用いて治療をおこないます。当院ではイオントフォレーシスやボツリヌス菌毒素の注射は行っておりませんので外用剤の治療が中心ですが、ボツリヌス菌毒素の注射につきましては連携先の形成外科の先生にご紹介させていただくことも可能です。
原発性局所多汗症の中で、わきや手の平の症状に対しては2020年から保険適応で使えるお薬もでて治療の選択肢が増えていますのでぜひご相談くださいね。
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