【手足口病:てあしくちびょう】
手足口病は、手足や口を中心として水疱を伴う皮疹がでるウイルス感染症です。90%ほどが5歳以下の小さなお子さんに発症しますが、大人でも発症することがあり大人の方が症状が強く出る方も多いです。
コクサッキーウイルスA6、A16、エンテロウイルス71というウイルスが原因となっていることがほとんどです。飛沫感染・接触感染・便に排泄されたウイルスが経口的に感染する糞口感染の3つの経路で感染することが知られています。保育施設や幼稚園などの小さなお子さん同士が濃厚な接触することが多い場所では集団感染に対する注意が必要です。特に5歳以下のお子さんでは、原因ウイルスに一度も感染したことのないお子さんが多いため感染した多くのお子さんで症状が発現します。7月以降の夏に発生することが多い傾向にあります。
ウイルスに感染してから3-5日後に、口の中・手の平・足の裏などに3㎜ほどのおおきさのやや紡錘形にちかいかたちの赤みを伴った水疱が多発します。体や臀部に皮疹が見られることもあり、臀部では手足口病に特徴的な形の水疱が見られることが多く、症状が軽い場合に臀部の皮疹が手足口病の診断根拠になることもあります。発熱はないことが多く高熱になることはほとんどないまま、数日から1週間の間に自然に治っていくことがほとんどです。ごく稀に膜炎や脳炎などの合併症を引き起こすことがありますので、ご自宅でのお子さんの様子は注意深く観察するようにしましょう。高熱が続く、強い頭痛、吐き気、呼びかけに反応しない、水分をとれずおしっこがでないなどの症状がみられた場合はすぐに小児科を受診するようにしましょう。
指先に水疱ができた場合は、爪の周りに炎症が波及するため爪の変形や1-2ヶ月かけて爪が浮いてきて剥がれ散ることもしばしば経験しますが、その後よい爪がでてきてきれいに治ることがほとんどです。お子さんにとても多い病気ではありますが、原因ウイルスに一度も感染したことがない場合は大人でも発症します。大人の場合はお子さんの場合よりも症状が強く出る傾向があります。
原因ウイルスの特効薬はなく、特別な治療薬はありません。まれではありますが合併症がおこることもありますので前述した合併症の症状の出現がないか注意深く観察しながら、症状に応じて外用剤などで対応します。
手足口病は症状が改善して治ったあとも3-4週間という比較的長い期間、便の中にウイルスが排泄されることも多く、ウイルスに感染しても症状がでない場合もあるため、症状がある人だけ隔離することは有効な予防法ではありません。学校保健安全法でも、手足口病は登園・登校・通勤などの制限はありません。特に、小さなお子さんでは、衛生観念が発達していないため乳幼児の集団施設では感染の広がりを防ぐことは難しいです。手足口病は軽い症状のことがほとんどで感染してはいけないような特別な病気ではなく、ほとんどの方が子供のうちに感染し免疫をつけてきた感染症ですので、やみくもに怖がる必要はありません。
予防は、一般的な風邪の予防とかわらず手洗いをしっかりする(タオルの共有はいけません)ことと、排泄物を適切に処置することです。保育園などでは、職員と子供たちがしっかりと手洗いをし、おむつ交換の際に職員が排泄物を適切に処理した後手洗いをしっかりと行うことが大切です。
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