【白癬・爪白癬:はくせん・つめはくせん】
水虫はカビ(真菌)の一種である皮膚糸状菌(日本では約10種類ほど)が感染して起こる症状で、正式には「白癬」といいます。皮膚の表面の角質や髪・爪の主成分であるケラチンという淡泊質を栄養にして生きているので、皮膚の表面の角質の中に菌が増殖して起こります。
白癬は、足(水虫)・陰部・足の付け根(たむし)に発生しやすい傾向がありますが、手や体、頭皮や顔にできることもあります。手足の白癬が長く続くと爪の中にも菌が入り込み、爪白癬(爪水虫)となります。
足白癬は、小さな水泡ができる小水疱型、足の指の間がふやけたりただれる趾間型、皮膚が固くガサガサひび割れる角質増殖型に分けられます。いわゆる水虫の症状としてわかりやすいのが、小水疱型や趾間型になります。放っておくと菌が爪に侵入し、増殖すると爪白癬となり、爪が白く濁ったり厚くぼそぼそとした爪になります。
夏場は蒸れてカビも増殖しやすいため、水泡や指の間のかゆみを伴うジュクジュクとした症状が目立ちやすくなります。冬になるとジュクジュクやかゆみがなくなるため、しっかりと治療しなかった場合でも一見良くなったようにみえることもあり、冬のカサカサやひび割れと思って放置してしまうケースも多い傾向があります。
白癬菌は皮膚の角質で増殖しているため、皮膚のカサカサや水疱部分を少量採取(浮いている皮をつまむので痛みはほとんどありません)して、その場で顕微鏡を使って角質の中で白癬菌が増殖していることを目視で確認のうえ確定診断します。
炎症が強くジュクジュクが強い時期などには白癬菌が隠れてしまうため、一度では診断ができず、いったん湿疹の治療で炎症を抑えてから再度顕微鏡検査を行うこともしばしばあります。顕微鏡検査が難しいケースでは抗原検査も保険適応になりましたが、皮膚科専門医であれば顕微鏡で診断がつくことがほとんどです。
適当にちょこっと皮膚をつまんでいるように見えるかもしれませんが、検体を採取する場所によっては菌がとても少なく診断がつかないこともあり、速やかで的確な診断には、ぱっと一目見て「ここだ!」という場所から採取するという皮膚科専門医の熟練した技が必要です。水虫の症状はぜひ皮膚科専門医を受診しましょう。
皮膚症状のみの場合は、症状に合わせて抗真菌剤を中心とした外用剤の組み合わせによる治療になります。白癬菌は症状がない部分にも隠れており、症状がある部位だけ外用しても隠れている菌が増殖してぶり返すことがほとんどですので、皮膚科医の指導のもと、症状がない部分にも広めに、良くなってからもしばらく継続して外用することなどが重要です。
外用剤によってかぶれを生じる場合もありますので、外用してもよくならない場合は漫然と使用継続せず、定期的な受診でチェックを受けましょう。爪白癬や頭部顔面で毛穴の奥に白癬菌が増殖したケースでは外用剤の効果が出にくく、内服薬による治療が必要になるケースも多くなっています。内服薬の場合は飲み合わせの問題や定期的な採血検査の必要があり、それらをきちんと評価して行います。
足の水虫の症状を繰り返して治らないと感じている方の多くが「薬の使い方を間違っている」「水虫ではないのに市販の水虫薬で治療している」「市販の水虫薬でかぶれてしまっている」「実は爪白癬も併発しているため皮膚が良くなっても爪から皮膚に再感染している」など、適切な診断と治療がされていない傾向があります。
白癬をしっかりと治すためには、きちんとした診断はもちろん、外用剤の塗り方や使い方のコツをおさえる必要があります。「水虫なんて市販薬でいいよね」と思う方も多いかもしれませんが、実は水虫も奥が深い皮膚の病気の一つなので、ぜひ早めに皮膚科専門医にご相談ください。
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